ブログ(2011年以前の記事)の書庫は、こちらです。

『お道具&竹竿マニア』なアングラーが、フライフィッシングをキーワードに、
道具や森羅万象、さまざまなモノ、コト、を『辛口&主観的』な視点で書いています。

2015/01/30

"Alchemy Dharma 754 Parabolic" 開発の経緯(その2)





グラスロッドを作る。


といっても、オリジナルのアクションをもつグラスロッドのブランクを自分で作るには、ちょっとした規模の工場が必要だし、それなりの機械器具をそろえて、メーカーから買ったグラス素材をある程度まとめて在庫しなくてはなりません。
そのためには、少なくとも、年間最低数百本レベルの販売ルートがないと事業としては成立しないと思います。

そこで、製作しようと考えているグラスロッドのブランクを、グラスロッドのブランクを製作しているメーカーに発注して、自らが求めるアクションと仕様でブランクを製作して頂くことになります。

そのためには、まずメーカーのブランク設計担当者と打ち合わせをしながら、ブランクの設計仕様を決めなければなりません。
とはいえ、こちらはシロウトです。どんな形状のマンドレル(心棒)に、どのような形にカットしたグラス素材(これも何種類もあります)を巻き付けると、こういうアクションになる、なんてことはまったくわかりません。

「何番のフライラインを使う、長さがいくらで、アクションはこんな感じのロッドを作りたいのです」

と、希望するブランクに求める性能や特徴を、設計担当の方に伝えるわけです。
というと、なんだか簡単なように感じるかもしれませんが、
ひとりひとり感覚や表現方法が違うので、自分がイメージしているフライロッドと設計の方がイメージするロッドに整合性があるかどうかはわからないのです。
というよりも、同じひとつの言葉から、まったく違うものを想像しているかもしれません。

で、どうするのか、ですよね。

実は、すでに存在するサンプル、つまり、いま既にあるフライロッド、をベースにして新しいフライロッドを作り上げていくのです。
そのベースにする竿は、1本のこともありますし、何本かの竿を参考にしてそれらのいいとこ取り、という場合もあります。
とにかく、ある竿を手元に置いて、そこからどのように変化させるか(もしくは、その竿のコピーを作ることもあるとは思います)を打ち合わせていくわけです。

今回のロッドを製作するためには、まず2本のフライロッドをベースにしました。
Mario Wojnicki の "217P4 7.2 ft - 4 line - 3 pc"
と、"227P4 7.5 ft - 4 line - 3 pc"
の2本です。
その他にも、数本の、やはり Mario Wojnicki のグラスロッドを参考にしています。

それらの竿のそのまんまコピーも作ることは可能だとは思いますが、それならばオリジナルを買えば済むことなので、そのようなことは、いたしません(笑)

また、実際問題として、オリジナルのデッドコピーを製作することは、制作時の詳細なデータがない以上、オリジナルと同じブランクメーカーでないと不可能なのかもしれません。

もっと言うならば、サンプルはバンブーロッドでもグラファイトロッドでも、なんでもいいわけです。あくまでも、新しく製作するロッドを考える上でのベースになるだけですからね。

たとえば、Leonardの38Hを持ってきて、これと同じアクションのグラスロッドを作って欲しい、ということも可能だということです。
素材特性が違うので、まったく同じ物が出来るわけではありませんが、ほぼ同じようなアクションのフライロッドが出来るはずです。
その違いをどう判断するか、は、かなり個人的なものだと思います。

実際の手順に戻りますが、
先ず設計の方に上記の2本のグラスロッドを預けて、その2本をベースにして、素材としてユニディレクショナルグラスを使用して、3ピースから4ピースに設計変更したブランクを2本作っていただきました。

メーカー社内でのブランクの設計、製作過程は、私には計り知れないので想像ですが、おそらくロッドに様々な負荷を掛けて計測したベンディングカーブをベースに、ブランクを設計してると思います。
動的な負荷については、どうなのでしょうか。もしかすると、シミュレーターでなにかしているかもしれませんが、よくわからないですね。

ブランクの径を計測すると、マリオのブランクはバットが逆テーパーになったりしていたのですが、ブランクメーカーから送られてきたブランクはふつうの先細りのテーパーでした。

ロッドのアックションを決めるのはブランクのテーパー(≒マンドレルの形状)だけではなく、ブランクに巻く素材のカッティングでも変えられますので、ブランクの外観(形状)はアクションを決めるための大きな要素ではありません。

ブランクを振ってみても、それがどんなフライロッドになってるのかはまったくわかりません。
それらのブランクをロッドに組上げで、そのロッドで実際にフライを結んだラインをキャストして、はじめて自分が意図したロッドになっているかどうかを試してみることができるのです。

その初号試作の2本ですが、これが、予想以上にすばらしい出来だったのです。

このロッドは、昨年2月の「つるや釣具店」さんのイベントに持って行ったので、実際にラインを通して振って頂けた方もいらっしゃるかと思います。





.

0 件のコメント:

コメントを投稿