この2013年の12月に出版された『バンブーロッド教書』と、どうしても比較されるのが、
1999年に同じ「フライの雑誌社」から出版された『アメリカの竹竿職人たち』だと思います。
この2冊の本が出版される間に、14年の歳月が流れたのですが、その14年間に竹竿(竹類を素材とするフライロッド)の世界で大きく変化したことがあります。
それをひとことで表すと、「バンブーロッドの伝統」からの解放だと思います。
もう少し付け加えるならば、レナードやペインが代表する近代アメリカの伝統的なバンブーロッドという縛りから、メーカーやビルダーが自由になった、ということです。
その結果として、約100年にもわたって伝統的に使われてきたトンキンケーン以外の竹篠類をブランクの素材にもちいたり、これも伝統的に使われていた金属フェルール以外の様式のフェルールを使用したりといった、素材部分の変革とともに、フライロッドとして以前では考えられなかったタイプの新しいアクションを持った竹竿を作るメーカーが現れてきました。
その背景として、ネット社会の発展によりメーカーやビルダー間のデータや技術の共有が進んだからだ、などの理由も考えられますが、そのあたりの考察はまた後ですることにして、この本の書評、というよりはひと通り読んでみた感想ですね、に進みたいと思います。
まず最初に、定価3,800円の書籍を予約販売のみで売る、という販売方法にはちょっと引っ掛かりました。
本なのに立ち読みで中身を確認してから買うという方法が取れないというのは、それなりに高価な紙媒体の書籍としてはいかがなものかと思います。
いまどきの出版社の事情をわからないわけではないですが、リスクを購入者の方へ押しつけるという販売方法にはイマイチ納得できないですね。
内容に関してですが、クラッカーバレルの翻訳は、英語をスラスラとは読めない私にとってたいへん面白かったです。
ジュリアーニさんが書かれている部分は、バンブーロッドの取扱方法に関してなど、バンブーロッドへの偏愛からかもしれませんが、かなり「くどすぎ」て余計なお世話なように感じましたが。
バンブーロッド(竹竿)って、ごくふつうに注意して使えばめったに破損することはないので、このジュリアーニさんのように慎重に構えずに、もっと日常的に竹竿を使って欲しいなあ。
というのが、竹竿の好きな釣り人としての個人的な感想であり、この本を読んでバンブーロッドをはじめて買おうと思い立った方への私からのアドバイスになると思います。
世界のバンブーロッド最新事情と巻末のフライロッドの写真をもっと綿密にリンクさせることができれば、内容的にはもっと面白かったのじゃないかなと思いました。
おそらく、この国でバンブーロッド(竹竿)に興味を持っておられる方は、昔のファクトリーロッドではなく、今のメーカーやビルダーが作る竿の写真が見たいと思っておられるのじゃないでしょうか。
その他の部分は、島崎さんと三浦さんの文章以外は、なんだかどこかで読んだことのある文章や内容の再掲のように感じたのですが・・・。
いまの時代、いちばん大きく変わりつつある、この国の竹竿メーカーやビルダーのことをもっと取り上げて欲しかったなあと思います。
時代が変わった、こともあるのでしょうが、1999年に『アメリカの竹竿職人たち』を読んだときのように、読者である自分までもが著者の竹竿への熱情に感応して、そこに取り上げられていた竹竿を欲しくなって我慢できなくなってしまう、なんてコトは起こりませんでした。
それは、この本自身のせいではなく、情報や物が過剰になってしまったこの時代にはおこりがちなことなのかもしれませんが、なんとなく寂しいですね。
さて、この本、3,800円を支払う価値があったのか?
その判断は、この本を買われた読者の皆様におまかせいたします。
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